私たち居宅のケアマネジャーは、在宅介護している方のお手伝いをすることが仕事です。
とはいえ、仕事をしている中で「もう施設に行ったほうが…」と思うことってあります。逆に「全く在宅で問題なく過ごせそうなのになー」と思うこともあります。
いずれにしても在宅介護の限界はそれぞれのご家庭の事情に大きく依存しますので、とくにご決定に異論を挟むこともないですし、上記のように思ってもそれは私の感想であって、介護されている人や介護している人には何の関係もありません。
一人暮らしの方もいれば、高齢二人暮らしで身体的な介護はできないよ、であったり若い人と同居していてもその若い人は仕事があって介護はできないよ、とかザラにあります。
このようにご事情は様々ですので、『この状態では家で生活するのは無理だ』の判断を画一的にすることは不可能です。個別の判断に委ねるしかありません。
ですので、いかなる選択であっても可能な範囲で最大のお手伝いをしています。
在宅介護か施設介護かは、必ずしもご本人の心身状態や意志だけで決めらるものではありません。
「本人の意志が尊重されなければ!!」という綺麗事をいうケアマネさんとか結構いますが、私は最終的に介護される人の都合よりは介護する人の都合が優先になると思っています。
自分も将来要介護状態になったとき、家族が大変だったら全然施設でいいと思っています。だって『施設の生活は、いかにすればより良い生活ができるのか』にむけてすべてのスタッフが全力で取り組んでいること、そして実際利用している人が良い生活をしているのを見て知っていますので、むしろ入りたいです。
ケアマネジャーとして仕事をしてきた中で、施設入所を考えていく・ご提案していく個人的な目安としていることがあります。
それは『排便の失敗』がコンスタントに発生した時点です。
理由として、
①排泄介助(便失禁)は介護する人にも、される人にも精神的な負担感があること
②入浴や食事と異なり、時間が決まらないものなので、それを狙ってサービスを計画することが難しいこと
③家の中が排泄物の臭いになってしまいがちなこと
があります。
①は自分だったら、と考えたら共感してもらえると思います。
②については、たまに「便が出たらヘルパーさんを呼べばいいんじゃないの?」という方もいらっしゃいますが、すべての介護サービスは契約⇒計画案作成⇒担当者会議⇒計画確定というプロセスを経て開始されますので、うんちが出てからでは全く間に合わないんです。仮にここをすっとばしていきなりサービス提供して、それを介護保険サービスとして算定したら、たまにニュースになる「不正給付」です。
あるいは上記プロセスを経たうえで日常的に訪問介護(ヘルパーさんの正式名称)を利用している方でも、排泄介助があらかじめ計画されていなければ即時の利用はできませんし、あらかじめ計画してあったとしても『毎週〇曜日の〇時から30分間程度』という形で計画されるものなので、「今うんち出たから今手伝いにきて」は対応できません。訪問介護も人手不足ですので尚更です。
③についても想像できますよね。仮に臭ってなくても来客の度に「うんちの臭いしてないかな?」って心配するのは結構なストレスです。お客さんに「うんちの臭いします?」とは聞けないですし。
これが尿の失敗だと、オムツや尿取りパッドで対応できることも多いので、出てしまったから即時になんとかしないと!とはなりにくいんです。
なので排便の失敗がコンスタントになってきたら、施設を考えていいタイミングなんです。もちろん提案はしますが、それを採用するかどうかはお客様次第です。施設入所に向けてシフトしていく方もいらっしゃれば、排便の失敗は織り込み済みとして在宅介護を継続される方もいらっしゃいます。
さらには費用負担が難しくて、消極的に在宅介護を選択するケースもあります。それも含めて、お客様自身の選択です。こちらは判断の材料になる事柄をお示ししますが、何を選ぶかはお客様です。
結局、何が言いたいかというと、『介護であっても自分(たち)のことは自分(たち)で決めてください』ということです。決めるために必要な材料はきちんと提示します。
元気なうちにこそ、介護が必要になった場合について考え、ご家族の間で話し合い、場合によっては書面に残しておくことをお勧めしつつ、今日の記事を締めたいと思います。
お読みくださりありがとうございました。



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