通所サービスは、自宅での入浴が難しい状況の方が多く利用なさいます。もちろんそれ以外でも出かける楽しみとして利用する方や、運動の機会と割り切って利用する方もいらっしゃいますが、多くは入浴が主な目的です。
事業所によっては食事と入浴の提供は無く、そのかわり運動だけを半日やって帰るみたいなところもあります。
ちなみに過去に日本政策金融公庫総合研究所で行った調査によると、在宅介護サービス利用者の約6割が通所サービスを利用しているそうです。
何が言いたいかというと、半数を超える人たちが利用している通所は『在宅介護の柱』であるということです(個人の感想です)。
通所とは基本的にご自宅までお迎えに来てもらい、通所事業所へ行ってプログラム提供を受けて、また自宅まで送ってもらう、という流れです。
通所事業所ごとに特色あるプログラム提供をしてくれます。入浴や食事、排泄などの介助であったり、気分転換のためのレクリエーション活動、健康維持増進のための運動プログラム、場合によってはリハビリ専門職による機能訓練を提供している場合もあります。
この記事を読んくださっている方の中にも、ご家族が通所利用しているケースは多いんじゃないかなと思っています。
そこでタイトルの『通所介護(デイサービス)』と『通所リハビリ(デイケア)』の違いについて、ご説明します。
この二種類について、それぞれ似て非なる全く別の類型なんですが、利用されている方やご家族自身はあんまり区別がついていないことが多い印象があります。デイケアに行っているのにデイサービスだと思っていたり、その逆も然りです。
「うちのじいちゃんはリハビリしに行っているから、通所リハビリ(デイケア)だよ」と思った方、それ違っているかもしれませんよ。
法律上は通所リハビリ(デイケア)は、常勤の医師と理学療法士などのリハビリ専門職が必置です。なので『病院か診療所、もしくは老人保健施設に併設されている』場合がほとんどです。
上記への併設が条件なのではなく、常勤医師とリハビリ専門職の必置が条件なので、理論上は併設でなくて単独でも開業できますが、デイケアの売り上げから医師の人件費を出すことは普通はできないです。もう完全に大赤字になっちゃいます。
なのでもともと医師の配置がある『病院か診療所、もしくは老人保健施設』でないと経営できない訳です。これらと併設されていない場合は、ほぼ間違いなく『通所介護(デイサービス)』です。
ちなみに通所リハビリ(デイケア)でも食事提供、入浴介助、排泄介助は受けられます。なのでリハビリだけやるってわけでもないです。
では『通所介護(デイサービス)』についてご説明します。
こちらは医師の配置が不要です。常勤看護師は必置ですが、リハビリ専門職も不要です。なので人件費がかからない分、介護保険分の利用料は同じ規模のデイケアよりも安価です。提供されるサービスに納得がいっているなら非常にコスパいいわけですね。
また運営する側の立場からすると、お金がかからないし、医師とリハビリ専門職を探さなくてもいいのでデイケアに比較してデイサービスは開業しやすいです。そのため、それなりの人口のある地域であれば結構いっぱいあります。やや乱暴に言うと、通所はだいたいがデイサービスです。
デイサービスでも食事、入浴、排せつの介助を受けられますし、事業所によってはリハビリ専門職の配置もあるので、医学的根拠に基づいたリハビリを受けることができる場合も多いです。
なんなら「自分はもっと高いパフォーマンスでリハビリに取り組みたい!!」という熱意を持ったリハビリ専門職がデイサービスを開業することも多いので、デイサービスであってもリハビリ病棟なみのリハビリを受けられる事業所もあります。
配置する義務はないけど、配置しちゃいけないわけではありませんからね。事業所によってリハビリ専門職がいたり、いなかったりします。
ついでに言うと、リハビリ病棟だと入院期間に限度がありますが、通所サービスだと期間の縛りはないですしね。認定を受けている限りはずっとリハビリを受けることもあり得ます。
ここまで読んで、「あれ?」って思った方、聡明です。ここで「うちのじいちゃんはリハビリしに行っているから、通所リハビリ(デイケア)だよ」の件を回収していきます。
通って運動をしている、リハビリ専門職がいる、というだけでは、そこがデイサービスなのかデイケアなのかは判断できないんですね。デイサービスにもリハビリ専門職はいる場合がありますから。
さらに話をややこしくさせることに、デイに行くと病院の先生みたいな白衣を着ている人が施術してくれているけど、その人はリハビリ専門職ではなくて『柔道整復師』とか『あん摩マッサージ指圧師』だった、なんてこともあるんです。
なので通って運動しているけど、そこは『通所リハビリ(デイケア)』ではなく『通所介護(デイサービス)』だったということも普通にあり得るんです。
わざわざ説明するまでもないと思っていますが念のため申し添えますと、『柔道整復師』や『あん摩マッサージ指圧師』が悪いという話ではないです。誤解なきよう。私は交通事故にあったら毎日整骨院に通います。マッサージ大好きです。
シンプルに『理学療法士(PT)』、『作業療法士(OT)』、『言語聴覚士(ST)』の三職種からなるリハビリ専門職とは違いますよ、という話です。ちなみにこの三職種は病院にいる、いわゆるリハビリの先生たちです。病院にいるリハビリの先生のなかに、『柔道整復師』と『あん摩マッサージ指圧師』は普通は含まれません。
このあたりを深めていくと法律の文章を引用したりしないといけなくなりますし、利用する人がそこまで重箱の隅をつつくような知識を持つ必要もないので、こんな感じにしておきますが、要するに『デイケア=運動』、『デイサービス=介護』という簡単な棲み分けではないですよ、という話です。
デイケアであっても、そこまで濃密にリハビリをしていない事業所もありますし、デイサービスにも関わらず専門的なリハビリをしている事業所もあります。どちらが良い、悪いではなく、『自分の求めに合った事業所か?』という視点で見てほしいです。
まぁ利用する分には、その事業所のサービスに納得がいっていればデイケアでもデイサービスでも構わないわけですが、この区別ができている人は非常に強い玄人感が醸し出せます。なんせケアマネ試験に受かるレベルの人でないと知らない知識ですからね。
今日もお読みくださりありがとうございます。



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